クレパスとクレヨンは何が違う?混色の秘密と失敗しない選び方
クレパス クレヨン 違いを即答できる大人は、意外なほど少ない。春先の文房具売り場や画材コーナーで、色鮮やかなパッケージを前に立ち尽くした経験はないだろうか。「どちらも子どものお絵描き道具」とひとくくりにされがちだが、構造、描き味、そして描画の可能性には決定的な隔たりが存在する。
保育園や幼稚園の入園準備を進める保護者の間でも、このクレパス クレヨン 違いを把握しないまま購入し、園指定のものと違って買い直すケースが散見される。手指の発達段階や表現したいアートの技法によって、手にとるべき道具は全く異なる。本稿では、日常に溶け込みすぎて見落とされがちな両者の真実を、製造技術と教育の両面から深掘りしていく。
「クレパス」は固有の商品名?大正時代に誕生した日本発の画材革命
多くの人が見落としている最大の事実がある。「クレヨン」が棒状の固形描画材全般を指す一般名詞であるのに対し、「クレパス」は株式会社サクラクレパスの登録商標だ。一般呼称としては「オイルパステル」に分類される。
時計の針を1925年(大正14年)に巻き戻そう。当時、日本の図画教育で主流だった西洋伝来のクレヨンは硬度が高く、線画には適していたものの、色を混ぜ合わせたり塗り広げたりする表現には不向きだった。一方、粉末状のパステルは混色に優れていたが、定着液が必要で飛び散りやすく、教室を汚す難点があった。
「クレヨンの手軽さと、パステルの美しい混色性を兼ね備えた画材はつくれないか」。創業者である佐々木泰樹らは試行錯誤を重ね、世界で初めてオイルを用いた棒状絵の具の開発に成功した。これがクレパスの誕生である。日本発のこのイノベーションは、後にオイルパステルという新ジャンルとして世界基準へ昇華していく。
クレパスとクレヨンの決定的な違いとは?主原料の配合比率と描き心地を比較
見た目が酷似している両者を分ける本質は、主原料の「配合バランス」にある。日本産業規格(JIS)の基準や各メーカーの製造比率を見比べると、その差は一目瞭然だ。
クレヨンは、顔料に固形ワックス(パラフィン蝋など)を多めに練り込んで作られる。油脂分が少ないため芯が硬く、紙の上に引いた線はサラリとしていてべたつかない。細い輪郭線を描いたり、小さな手で力任せに握りしめたりしても折れにくいのが強みだ。
対するクレパスは、ワックスの比率を抑え、液体油(ミネラルオイルなど)や軟質軟化剤を豊富に配合している。この絶妙な油分が、バターのようになめらかな描き心地と高い粘性を生み出す。指先でこすればグラデーションが広がり、画面上で2色、3色と重ねて新しい色を作り出す重色も自由自在だ。筆圧がまだ弱い幼児でも、軽く滑らせるだけで鮮烈な発色が得られる。
ぺんてるが牽引したクレヨンの進化と「折れにくさ」の革新
クレパスの台頭に対抗するように、クレヨンの品質向上を推し進めたのが、ぺんてる株式会社をはじめとする日本の文房具メーカー群だ。
従来の輸入クレヨンにありがちだった「硬すぎて発色が薄い」「ポキポキと折れやすい」という欠点を克服するため、国産メーカーは独自のワックス調合技術を磨き上げた。極太の円柱形状や三角形の持ち手、さらにはフィルム巻きを施すことで、落としても粉々に砕けない耐久性を実現している。
力加減をコントロールできない乳幼児でも思い切り画用紙へ叩きつけるように描けるクレヨンは、今なお幼児教育の初歩段階において不可欠なポジションを守り続けている。
発色と混色の秘密:年齢別・用途別の正しい選び方
売り場でどちらを選ぶべきか迷った際は、対象者の「年齢」と「目的」を軸に考えると失敗しない。
1歳から3歳前後の筆圧が定まらない時期には「クレヨン」がベストだ。手が汚れにくく、紙からはみ出して机に描いてしまっても拭き取りやすい製品が多い。まずは握ってトントンと点を打つ、太い直線を引くといった「描く行為そのものの楽しさ」を体験させるのにうってつけだ。
4歳を過ぎ、塗り絵の枠内を塗りつぶしたり、複数の色を混ぜて夕焼けのグラデーションを作ったりしたくなったら「クレパス」の出番となる。下地の色を塗った上に別の色を重ね、ヘラや爪で削り取る「スクラッチ技法」など、高度なアート表現にも柔軟に応えてくれる。小学生の図工の授業で指定される画材の多くがクレパスなのは、この表現の幅広さに理由がある。
SNSやYouTubeで再評価される大人のアート表現と文房具の現在地
近年、この2つの画材は子どもの教育現場を飛び越え、大人のクリエイティブシーンでも熱い視線を集めている。YouTubeやInstagramなどのプラットフォームでは、クレパスやオイルパステルを用いた風景画のメイキング動画が数百万回再生を記録する現象が珍しくない。
重厚な油絵のようなマチエール(質感)を手軽に再現できる画材として、イラストレーターや趣味のアーティストがこぞって導入しているのだ。一般社団法人日本文具協会が発表する市場トレンドでも、高級志向の多色セットや、大人向けの落ち着いたパッケージデザインが安定した支持を獲得している。
失敗しない購入ガイド:パッケージの表記で見分けるチェックポイント
店頭で購入する際は、外箱の表記を冷静に確認してほしい。多くのメーカーは幼児向けの配慮として、国際的な安全基準(APマークやCEマーク)の取得状況を明記している。
水で落とせるタイプ、太軸タイプ、あるいは蛍光色を含んだセットなど、用途に特化したバリエーションも豊富だ。「クレヨン=線画・低年齢向け」「クレパス=面塗り・混色・表現力重視」という基本構造さえ頭に入れておけば、目的にジャストフィットする一箱を迷わず選び取れるはずだ。 (出典: クレパス クレヨン 違い(Yahoo!ニュース))