王室科学者アルフィーの隠された過去と真実:真実のラボを徹底解明
アンダー テール アルフィーという特異なキャラクターが放つ影は、発売から年月を経た今なお、プレイヤーの胸を締めつけ続けている。白衣をまとい、黄色い爬虫類のような姿で現れる彼女は、一見すると典型的な「社交下手なオタク科学者」に過ぎない。自作のロボット「メタトン」の暴走を自作自演で止めさせ、主人公の旅をモニタリングしながらお気に入りのアニメを熱心に語る姿は、どこかコミカルで愛らしくさえある。しかし、地下世界の行く末を託された王室科学者の素顔は、そんな軽やかな記号的キャラクター像とはかけ離れていた。
インディーゲーム史に残る金字塔『UNDERTALE』の中で、プレイヤーがアンダー テール アルフィーの抱える底知れぬ孤独と後悔に直面するのは、物語が深淵へと至るPルートの終盤だ。作者であるトビー・フォックスは、道化めいた演出の裏に「救うことのできなかった命」への贖罪を忍ばせていた。彼女はなぜそこまで自身を激しく嫌悪し、死の淵へと追い詰められていたのか。その真実を紐解く。
王室科学者アルフィーの隠された過去と真実:真実のラボで明かされる罪
ホットランドに建つクリーンでポップな研究所の地下には、外界から完全に隔離された「真実のラボ」が息を潜めている。薄暗く湿り気を帯びた空気が漂うその空間こそ、アルフィーの過去が封じ込められた場所だ。
かつて地下世界の王アズゴアから命を受けた彼女は、バリアを破壊してモンスターたちを地上へ解放すべく、人間のタマシイに宿る「ケツイ(Determination)」の抽出実験に着手した。だが、彼女が選んだ被験体は、死にかけて「タマシイが消えかかったモンスターたち」だった。ケツイの過剰投与により一時的に生気を取り戻したモンスターたちは、やがてその肉体が耐えきれず融解。ドロドロに溶け合い、複数の個体が癒着した異形の怪物「アマルガム」へと変貌してしまったのである。
家族の元へ帰すと約束していた遺族たちからの手紙を前に、彼女は恐怖と自己嫌悪で立ちすくんだ。真実を公表することもできず、モンスターたちを家族の元に戻すこともできず、冷暗所で怪物を世話し続ける日々。これが、彼女が背負い続けた耐え難い「罪」の正体だった。
「アマルガム」誕生の悲劇と王室科学者としての重圧
前任の王室科学者W.D.ガスターがコアの実験中に消滅したあと、その後任として抜擢されたアルフィーには、当初から実力へのコンプレックスが付きまとっていた。彼女がアズゴアに認められたきっかけであるロボット「メタトン」すら、実際にはタマシイを持つゴーストに専用のボディを与えただけであり、完全な自立型人工知能ではなかった。
過大な期待と自身の能力のギャップ。モンスターたちの未来を一手に背負わされた重圧。その果てに起きたアマルガム化の悲劇は、すでに脆かった彼女の自己肯定感を完全に粉砕した。真実のラボの奥底に遺された日誌には、次第に精神を病み、自罰的な思考に囚われていく過程が生々しく刻まれている。救いようのない絶望の中で、彼女がいつ川へ身を投げてもおかしくない心理状態にあったことは、作中の各ルートで仄めかされている通りだ。
アンダインとの絆がもたらした光と自己肯定の再生
暗澹たる罪悪感に沈むアルフィーの唯一の錨となっていたのが、ロイヤル・ガードのリーダーを務めるアンダインの存在だった。情熱的で真っ直ぐ、恐れを知らないアンダインに対して、卑屈で嘘を重ねてしまうアルフィー。対照的な二人の関係性は、単なるロマンスの枠を超えて、魂の救済として描かれている。
アンダインはアルフィーの嘘や弱さを糾弾するのではなく、オタク趣味も含めた彼女の存在そのものを真正面から受け止めた。主人公の後押しによって二人が想いを通わせる場面は、作中でも屈指の感情的なハイライトだ。そしてPルートのクライマックスにおいて、アルフィーはついに自らの過ちを告白し、アマルガムたちを遺族の元へ還す決断を下す。「逃げるのをやめ、真実と向き合う」――その勇気を与えたのは、紛れもなくアンダインへの愛情と、主人公が示した慈悲だった。
ハチノヨンが紡いだ珠玉の日本語ローカライズ
本作が日本国内でこれほど強烈な共感を呼んだ背景には、翻訳集団「ハチノヨン」による見事なローカライズワークがある。
原文におけるアルフィーの吃音混じりで早口な台詞回し、ネットスラングやアニメオタク特有の言い回しは、日本語のサブカルチャー文脈に完璧に落とし込まれた。アンダインを呼ぶときの照れくさそうな声調、真実のラボで見せる震える独白、メタトンへの複雑な愛憎。文字のフォントや台詞送りの速度までも巧みに操るハチノヨンの仕事によって、アルフィーの弱さと人間臭さは、海の向こうのプレイヤーの心にもダイレクトに突き刺さることとなった。
DELTARUNEへと続くトビー・フォックスの設計思想
トビー・フォックスが紡ぐパラレルワールド『DELTARUNE』においても、アルフィーは教室の教師として登場する。そこには地下世界のような過酷な実験室も、背負うべき重罪もない。チョークをなくして困り果て、生徒たちに気圧されながらも、穏やかな日常を生きている。
『UNDERTALE』と『DELTARUNE』を行き来するファンにとって、この二面性は極めて示唆に富んでいる。環境や運命の歯車が少し狂うだけで、誰もがアルフィーのように怪物を作ってしまうかもしれない。コンピュータRPGの常識を覆し、モラルと選択を鋭く問い直すトビーの手法は、この2作品を通じて一貫している。傷つきやすい心を持つ者が、過酷な役割を背負わされたときに何が起きるのか――アルフィーはその残酷な思考実験の体現者でもあった。
マルチプラットフォーム展開と熱を帯び続けるファンカルチャー
PC(Steam)向けに産声を上げた本作は、Nintendo SwitchやPlayStation Network(PS4/PS Vita)など幅広い家庭用ゲーム機へと移植され、世代を超えた新たなプレイヤーを獲得し続けている。いまやインディーゲーム業界を牽引する象徴的なタイトルとして、その存在感は衰えるどころか増すばかりだ。
Fangamerが展開する公式グッズでも、アルフィーとアンダインのフィギュアやぬいぐるみは常に高い人気を誇る。罪を犯し、懦弱さに打ちひしがれ、それでも歩みを止めなかった王室科学者。完璧なヒーローではなく、痛々しいほど不完全な彼女だからこそ、世界中のファンはいつまでもアルフィーの再生を愛おしく祝福し続けるのだろう。 (出典: アンダー テール アルフィー(Yahoo!ニュース))