飲む湿布?熱狂的ファンを生むルートビアの正体と美味な飲み方
ルートビア と は、一口飲んだ瞬間に「これは飲む湿布だ」と顔をしかめる人と、「この爽快感がたまらない」と喉を鳴らす人に残酷なほど二分される、米国生まれの国民的炭酸飲料である。茶褐色の液体の上にきめ細やかな白い泡が立ち上る姿はビールを思わせるが、アルコール分はゼロ。日本本土のスーパーでは輸入食品コーナーの片隅にひっそりと並ぶマニアックな存在だが、海の向こうや特定の地域では、ハンバーガーに欠かせないインフラ級の定番ドリンクとして君臨している。
世界の清涼飲料水産業を見渡しても、これほど飲む者の味覚を挑発し続けるドリンクは珍しい。好奇心から手に取った初心者がルートビア と は一体どんな飲み物なのかと原材料表示を凝視する光景は、もはやこの飲料を巡る通過儀礼と言っていい。名前に「ビア(ビール)」と冠しながらも子どもからお年寄りまでが日常的にがぶ飲みするこのノンアルコール飲料には、19世紀から続くアメリカの開拓史とハーブ療法の知恵が濃密に詰まっている。
「飲む湿布」と噂される謎の正体:ハーブとサルサパリラの薬効ルーツ
強烈なサロンパスのような香りの正体は、決して人工的な悪ふざけではない。ルート(Root=根)という名の通り、かつて北米先住民族が健康維持のために樹皮や木の根を煎じて飲んでいた薬草茶が起源だ。主原料として使われてきたのは、独特のスースーとした香気を持つサルサパリラやササフラスの根、そしてウィンターグリーンの葉である。ウィンターグリーンに含まれるサリチル酸メチルこそが、日本人が湿布薬の匂いとして真っ先に認識する成分そのものなのだ。
そこにバニラ、甘草(リコリス)、シナモン、ナツメグといった十数種類以上のスパイスやハーブが重なり合う。甘みと同時に鼻腔を突き抜けるメントール系の刺激が、脳を一瞬バグらせる。だが、この薬草ブレンドの複雑なコクこそが、脂っこいバーガーやフライドポテトの後味を瞬時に洗い流す最強のリセットボタンとして機能するのだ。
薬剤師ハイアーズの閃きから始まった清涼飲料水産業の革命
ルートビアを単なる家庭薬から商業的な大ヒット商品へと押し上げたのは、フィラデルフィアの薬剤師チャールズ・エルマー・ハイアーズだった。1876年のフィラデルフィア万国博覧会で彼が発表したブレンド飲料は、瞬く間に労働者たちの心を掴んだ。当初は「ルートティー」として売り出す予定だったが、炭鉱夫などの屈強な労働者に届けるため、あえて力強い響きを持つ「ルートビア」へと改名したという逸話が残っている。
禁酒法時代が到来すると、酒を飲めない大衆の喉を潤す合法的なエンターテインメントとして爆発的に普及した。薬効ハーブのすっきりした苦味と濃厚な甘み、そしてシュワシュワと弾ける炭酸の組み合わせは、アメリカの近代史そのものと共に進化を遂げていったのである。
スヌーピーも愛した米国文化と巨大ブランドの覇権争い
アメリカのポップカルチャーにおいて、ルートビアは自由とノスタルジーの象徴だ。世界的人気コミック『ピーナッツ (スヌーピー)』の中で、第一次世界大戦の撃墜王になりきったスヌーピーが、行きつけのカフェで「ルートビアを一撃くれ!」と注文するアイコニックな場面を思い出す人も多いだろう。近年、Netflixなどのストリーミング配信でクラシックな米国の名作に触れる若い世代にとっても、ルートビアはカルチャーのスパイスとして目にする機会が増えている。
現在の米市場では、熾烈なシェア争いが繰り広げられている。ルートビアの王道として知られるA&Wの缶入りリテール部門を擁するキューリグ・ドクターペッパーに対し、ザ コカ・コーラ カンパニーはバイト感のある刺激的な「バークス(Barq's)」で対抗する。ファストフード店からダイナー、自宅の冷蔵庫に至るまで、アメリカ人の生活空間には常にルートビアが溶け込んでいる。
沖縄県民のソウルフードへ:エイアンドダブリュ沖縄が育んだ独自カルチャー
日本国内において、ルートビアが異例の熱烈な支持を集めているのが沖縄県だ。戦後の米軍統治下にあった1963年、日本初のファストフードチェーンとしてオープンしたのがA&W Restaurants(通称エンダー)である。以来、現地法人であるエイアンドダブリュ沖縄株式会社の手によって、ルートビアは沖縄の日常風景へと深く根を下ろした。
エンダーの店内では、冷え切った分厚いジョッキに注がれたルートビアが運ばれてくる。驚くべきは、ジョッキが空になれば何度でも無料で注ぎ足してくれる「おかわり自由」のシステムだ。沖縄の照りつける強烈な日差しと湿気の中で飲む冷たすぎるルートビアは、本州の人が抱く「飲む湿布」という拒絶反応を一瞬で吹き飛ばすほどの爽快感をもたらす。
賛否両論の壁を越える!初挑戦でも激ウマになるA&W流フロートの魔力
「どうしても一口目が受け付けない」という初心者は、迷わずバニラアイスをトッピングした「ルートビアフロート」を試してほしい。これが最大のゲームチェンジャーだ。薬草の角が立ったハーブの刺激が、濃厚なバニラアイスの乳脂肪分と溶け合うことで、驚くほどまろやかなドクターペッパー風の極上クリームソーダへと変貌を遂げる。
氷のように冷たい炭酸の泡がバニラと混ざり合い、シャリシャリとした氷菓のような食感を生み出す瞬間はまさに至福。グラスに鼻を近づけたときの薬草香に怖気づかず、アイスを少し溶かしながらストローで吸い込む。気がつけば、あれほど奇妙に感じたハーブの余韻が癖になり、コンビニや輸入食料品店で茶色い缶を探し回る自分の姿に苦笑することになるはずだ。 (出典: ルートビア と は(Yahoo!ニュース))